交通事故で脳損傷を負った場合、後遺障害が残れば慰謝料を請求することができます。脳損傷と呼ばれる損傷には、脳の特定部位に強い力が働き、損傷をもたらす局所性脳損傷と、脳全体が揺さぶられることにより、脳内の神経細胞が損傷して起こるびまん性軸索損傷の2種類があります。
局所性脳損傷は、脳挫傷、急性硬膜外血腫、急性硬膜下血腫、外傷性クモ膜下出血を引き起こす可能性があります。脳挫傷は、脳の組織が損傷、出血します。急性硬膜外血腫は、脳を包む外側の硬膜と頭蓋骨の間で出血が起こり血が固まります。急性硬膜下血腫は、脳を包むクモ膜と硬膜の間で出血が起こり血が固まります。そして外傷性クモ膜下出血は、クモ膜の内部で出血が起きます。
また、びまん性軸索損傷は、高次脳機能障害や遷延性意識障害を引き起こす可能性があります。高次脳機能障害は、高次の脳機能に障害が残り、日常生活に支障をきたします。多くが後遺障害として残存し、症状の程度に応じて等級認定が行われます。遷延性意識障害は、「植物状態」と表現される状態です。
遷延性意識障害の定義は、1、自力移動不能、2、自力摂食不能、3、ふん便失禁状態、4、意味のある発語不能、5、簡単な指示に従う以上の意思疎通不能、6、眼球の追視不能、または認識不能、ということで、常に介護を必要とする重篤な後遺障害です。多くの場合、後遺障害1級が認定されます。